Teatro Azulを見てきました。


リスボンの対岸Almadaという街にあるTeatro Azulを見てきました。Teatro Azulとは「青い劇場」という意味で、その名のとおり建物の外観のいたるところ青いタイルが貼られています。設計者は、Manuel Graça DiasとEgas José Vieiraの二人組の建築家で、設計競技を経て、2005年にオープンしました。敷地は普通の集合住宅が建ち並ぶ住宅街にあり、遠方からでも並木の隙間からその青い塊が目に入ってきます。前面道路側は周囲の建物の高さに揃えたり、あちこち欠き込みを作ったりしているため、周囲に馴染んだ建ち方になっていますが、反対側は傾斜に沿って下がる劇場のヴォリュームがあらわになっているため、いささか巨大なヴォリュームの放つ威圧感は否めず、宗教建築のもつ特有の存在感のようにも感じられました。
しかし、この劇場は全体がとにかく徹底的に青いのです。隅々まで細かい青いタイルが貼られた青い塊なのです。内部には大小の矩形の劇場が3つ入っていますが、ロビーやカフェ、ギャラリー、などといった周囲の付随する空間を不定形で流動的な平面とし、その組み合わせにより外観はかなり複雑な形状となり、さらに凹凸により強い太陽の光を受けたいくつもの面がさらにさまざまな青い色を作り出しています。見に行った日は最初は曇りだったのですが、内部を見学している間に晴れ、空の青さに幾つもの青い面が重なり、何か抽象画をみているようでもあり、それはかなりピクチャレスクなのですが、その一方でここまで外形を複雑にする必要があったのかは少々疑問です(内部の裏動線はかなり複雑でしたし…)。が、市立劇場ということもあり、市民のための文化施設としてのアイコンとなるような存在感を放つ必然性もあったと考えると、そういった背景に対しては十分回答していると思いました。
ポルトガルにとって、青という色は、大航海時代の海につながり、リスボンのテージョ河の青さでもあり、ぬけるような空の青さでもあり、また教会の装飾タイルAzulejoは青いものが多く、いろいろなものを象徴する色だと思います。白やグレー、黒といったある意味設計者にとって常套手段とも言える無難な無彩色でなく、あえてその象徴的な青という色を選び(むしろ身近な色なのかもしれませんが)、それを至るところまで細かく貼りめぐらせた設計者の潔さを感じました。ただ難を言うと、その青さが中庭などで部分的には見えますが、内部ではほとんど感じられず、外観のみの操作に終始してしまっており、外観と内部の関係が希薄になっていると思いました。無理に内部と外部を連続させる必要はないのかもしれませんが、せっかくの印象的な外観の青さを内部でも楽しめるようなところがあってもよいのではないかと思いました。(MK)