「雨デモ風デモハウス」 を見てきました。

KMKa2012-03-11

東京小金井市に建つ「雨デモ風デモハウス」を見学してきました。「雨デモ風デモハウス」は、雨や風、太陽光、太陽熱といった自然のエネルギーを利用して、冷暖房にかかるエネルギーを削減する「エクセルギーハウス」の技術が導入されたモデル住宅です。カフェが併設されていて、ライフスタイルやエクセルギーハウスを体験できる市民に開放された施設です。住宅で使用するエネルギーを削減する技術や工夫が盛り込まれたプロジェクトで、雨水冷房、太陽温水給湯と暖房、詰らない樋、ビオトープ、ゴミゼロカフェ、天然冷蔵庫など、住宅全体の温熱環境の形成に関わる技術から、樋や冷蔵庫など部位や機能に限定された工夫など、全体から細部まで様々な取り組みが盛り込まれた住宅です。
一番の特徴は、温熱環境の形成の仕方にあります。屋根の上には暖房用と給湯用の集熱パネルが載り、床下には3トンの雨水を貯めるタンクがおかれています。その雨水が冬は温められて住宅の壁や床を暖め(見学したときは室温18.1℃、天井と壁は21℃)、夏は2重になった天井裏に敷かれたファイバーグラスでできた布地を雨水で湿らせることで蒸発散効果を促し、小屋裏通風窓を開けて自然風を流し、小屋裏の空気を冷やす、という仕組みになっています(夏は室温が30℃くらいで天井と壁は26℃くらいだそうです)。吹抜けの天井は、冷放射に効果的な金属板で仕上げられています。実際に見学したときの体感としては、内部空間全体が暖かい(温度差が少ない)、エアコンによる風の不快感や音もなく静かで、空気が安定している感じがしました。
話として面白かったのは、キッチンのすぐわきにつくられた「天然冷蔵庫」です。外から見るとガラリ戸でつくられた倉庫といったところですが、内部の床と棚板がエキスパンドメタルでつくられていて、冬は外の温度で野菜やビールなどを冷やす、というものです。冬は温められた室内では食べ物が腐ってしまうから冷蔵庫にしまう、というある種の矛盾した行為を現代人はしている、ということで、自然の中に置けば腐らないのだそうです。ただし、現在は流通の過程で冷蔵庫に保管されるため、一端保管された食べ物は腐りやすくなるので、なかなか難しいそうですが、地元で栽培される食材などが地元に流通するしくみをつくれば、流通の過程において大型冷蔵庫で消費されているエネルギーの削減につながり、社会システムとしては、ものすごく省エネになるのだ、とのことでした。
省エネルギーには大きく二つの流れがあると思います。一つはどんどん過酷になる気候変動の中で快適な室内環境形成のために高効率の機器を採用して省エネルギーを実現するもので、もうひとつは少し不安定な室内環境(「不安定」というのは自然の外気の影響を多少受け入れるため、室温や湿度の変動は受け入れる、という意味)でも、自然のエネルギーでできるだけ賄おうというものです。震災後は自然エネルギーへの依存度が高まる傾向がみられますが、どちらが正しいとかいう問題ではないとおもいます(多分どちらも正しいのです)。どちらも電力やガスといったエネルギー消費を減らすという点では、方向は同じです。ただ実際に住宅を考える場合は、住まい方や住む地域によってある程度選択に迫られ、その違いによって大きく住宅をつくる方向は変わります。そこを間違えると、せっかくの高い設備が無駄になったり、設備不十分で不満を抱く結果となってしまいます。多様な省エネルギーの思想や最新技術が巷にあふれている昨今ですが、住まい方や地域性を十分把握した上で、省エネルギー技術や設計の工夫を取捨選択することが一番重要だと思います。(MK)
夏に冷放射する吹き抜けの天井
外部に開いた「天然冷蔵庫」