*仮設住宅

KMKa2011-09-24

大震災で住宅を失った被災者の方の仮設住宅は、これまではプレハブ建築協会があたり、早急、安価、大量に仮設住宅を供給するのが一般的でした。しかし東日本大震災では、必要とされる仮設住宅の数が非常に多く、また必要とされる地域も東北地方全体にわたるため、プレハブ建築協会だけではまかないきれず、建築家や大学の研究室等の計画案が様々な形で建設されています。先日いくつかの仮設住宅についてお話を伺う機会がありました。また、東京建築士会の機関誌でも詳しく紹介されています。これらの計画がこれまでの仮設住宅と大きく違うのは、地元のも木材を使用した「木造」の住宅であること、仮設住宅をつなぐような半屋外のデッキスペースなど住民が共有して使うコミュニケーションの場が設けられていること、各戸の入口が対面配置になっていることなどです。福島県のいわきニュータウン仮設住宅は、杉を使った「板倉構法」で、杉の厚板で床、壁、屋根をつくる仮設住宅です。ここで使用された杉は、仮設住宅のあとは、復興住宅に転用されることを考えられています。また資材不足になった合板や断熱材などの代わりに、杉の厚板を多層張りと空気層で壁の断熱性を確保したり、屋根はススキ、床にはモミガラを断熱材として使用して、全て自然素材でできた仮設住宅ができあがった。また岩手県遠野市仮設住宅では、様々な6坪、9坪、12坪と広さの異なる住戸プランが提案され、多様な家族が住まうこと、また住宅を結ぶ屋根がかかったデッキスペースやコミュニティ菜園が計画され、仮設住宅の敷地内に、子供が遊んだり、お年寄りが会話をしたりする場がつくられています。このようないくつかの仮設住宅は、「木」という自然素材のもつ「ぬくもり」や、コミュニケーションの場の存在など、明らかにこれまでの仮設住宅にはなかった「温かさ」があるように感じました。(写真は、すべて社団法人日本建築士会連合会建築士」9月号より)(MK)