作りつけ家具のある名作

KMKa2011-01-29

某女子大での授業で、藤井厚二の「聴竹居」をとり上げています。その授業は環境に配慮したデザインを勉強する授業なので、「聴竹居」で試みられている環境への取り組みを紹介していますが、「聴竹居」をはじめ、藤井厚二の設計した住宅を見ていて面白いのは、「作りつけ家具」の豊かさです。時代的には「座」式から「椅子」式への移行期でもあり、床の高さなどにその工夫がみられると同時に、椅子や椅子に座ると必要になる机のほかにも、床棚や照明器具、建具などそのほとんどすべてをデザインしています。移動できる置き家具も個性的なのですが、特定の場所に「作りつけられた」家具は、建築の一部となってまさに「家具」以上のものとなり、その場になくてはならないものになっています。窓のすぐ横に設置されたソファベンチや、壁の一部をなしている飾棚などは、一つ一つの家具に仕込まれた工夫や建築との取り合いを見ているだけでも面白いし、もしそれがなかったらその場の豊かさが半減してしまうようで、なくてはならない存在にまとめられています。海外の作品では、ルイス・カーンの設計した「フィッシャー邸」のベンチと暖炉があります。「フィッシャー邸」は二つのキューブが重なりあったシンプルな箱の建築ですが、リビングに作られたベンチと暖炉は大きな一つの空間のなかに、特定の場所を生み出す絶妙な装置として作られています。「フィッシャー邸」でもベンチと暖炉がなかったら、ずっとさみしい空間になってしまうように思います。
作りつけ家具は、建物の設計と同時にしなくてはならないので手間もお金もかかります。でも、その場にしかない「オリジナル」の家具は、住宅のなかに楽しい場所を生み出してくれます。「作りつけ家具」は、移動できない、壊せない、など不安もあると思いますが、特別な場所となって、誰かの「居場所」となると思います。住宅を考えるとき、どこかに「特別な場所」を作ってみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、「聴竹居」は小泉和子さんの書かれた「『日本の住宅』という実験」という本に色々な家具の詳細が紹介されています。「フィッシャー邸」は色々な本が出ていますが、このHPのニュースにも紹介されていますKMKaの松下が共著で参加している「やさしく学ぶ建築製図」に写真家栗原宏光さんの撮影された写真が掲載されています。
(MK)