ナタリー・デセイ

久しぶりにオペラを観に行きました。
ナタリー・デセイの椿姫です。
原作は19世紀のパリを舞台にしたお話ですが、最近はモダンな演出が多いそうで、今回もとても抽象的な舞台装置と結構過激な衣装が使われていました。パーティーに明け暮れる高級娼婦のヴォレッタはどぎついピンクの衣装から脚も露な姿で、有名なアリアを歌うのですが、アルフレードと田舎暮らしを始めた後は一転してシャツにズボンというまったく飾り気のない姿で現れたので、結構びっくりしました。

今回の演出は最後、ヴィオレッタが死ぬ間際にアルフレードアルフレードのお父さんが駆けつけたのは、実は彼女の妄想であった、ということを示唆する結末だったのですが、これはある種自然に受け入れられました。ヴィオレッタの生き様は可哀想だし、せめて最期くらいいい思いをさせてあげたいとは思うのですが、通常の最後になって皆が後悔して駆けつける、という話ではあまりに都合が良すぎるだろう、といつも物語につっこみを入れたい気がしていたからです。妄想の中死んでいくというのは、不条理なようですが、わざとらしくハッピーエンドで終わるよりはずっと受け入れやすいです。源氏物語の宇治十帖の終わりのような「もののあはれ」を感じると言ったらいいすぎでしょうか。でも、原題は「La Traviata 堕落した女」ですから、結構ヒロインを突き放しているのに。

オペラの多くは古典ですが、新しい解釈や演出を加えて、時代とともに姿を変えていくのが面白いです。
建築も時代に耐えうるものを作っていかなくてはならないと思いました。(KM)