KMKa2009-12-13

「筑波の家」 を見てきました。
日本のパッシブデザインの第一人者である小玉祐一郎さん(エステック建築研究所神戸芸術工科大学教授)の自邸である「筑波の家」を見学させていただきました。小玉さんは、環境問題がこれほど大きな世論になるずっと以前から、自然の条件を上手に活用したパッシブデザインを謳い、自身の設計作品においてその効果を実践的にデザインに適用した作品をつくられている建築家です。敷地の南半分を庭とし、そこに面した2階建のRCの住宅で、この住宅は冬の日照を蓄熱するための壁や床が住宅の外郭をつくり、その大きな殻の中がいくつかのスペースに仕切られています。正面は南の日照を十分に得るためほぼ全面がガラス窓になっています。そこを通った冬の日差しが蓄熱層である床と壁を温め、日が落ちた夕方以降にはそこから熱が少しずつ放熱される、というシステムになっています。またその南に面した大開口を照らす夏の日射を遮るノウゼンカヅラの木はファサードを構成する重要な要素でもあり、訪れる人を印象付けています。
見た目には硬いRCの外郭に、内部の木質系の仕上げがちょうどよく調和し、さらに住む人のものに飾られる、という感じに、素材の質やスケールが徐々に柔らかく身体的なスケールに落とし込まれ、構造体から住む人のものまでが一つの住空間のなかに自然になじんでおり、非常に居心地のよい空間になっていました。
11月中旬の肌寒くなる夕方にお邪魔したのですが、日中の温かさを蓄熱した床と壁のおかげで、居間の窓を開け放していてもそれほど寒くなく、パッシブデザインの効果を短い時間ではありましたが感じることができました。(ちなみに、小玉さんご自身は半袖ですごしていらっしゃいました。)
1階の窓を開けると、居間と庭が一体化します。玄関は正面中央にあるのですが、その時に一緒にいた学生さんも私も小玉さんも奥様もみんなこちらの居間から出入りをしていて、この感覚はどこかといっしょだな?とふと思ったら、清家清先生の「私の家」の居間(「私の家」では「玄関がない」ので必然的に居間の引き戸を開けて室内に上がります)から出入りする感覚だ、と思いました。それもそのはずで、小玉さんは清家研究室出身なので、当然住宅に対する師の考えかたを受け継いでおり、あとで聞いた話によるとこの自邸を設計する際に「私の家」をかなり意識した、とのこと。「私の家」もそうですが、開口部を開け放したときの庭との一体感は、たとえ構造がRCになっても日本の住宅が昔からもっていた自然の環境と気負いなく対峙する「住まい」としての建ち方に共感を覚えました。(MK)