祐天寺のハイテクエコ免震工事

KMKa2009-10-26

先日、目黒区祐天寺で行われている免震工事の見学に行ってきました。数年前になりますが上野の西洋美術館が免震化されたことが話題になったように、昨今では、近代建築や歴史的建造物への耐震改修がよく行われているようで、そんな折、京都や奈良まで出かけなくても伝統的な建築物への免震工事が近くで事例見学ができる、ということで現場見学をさせていただくことになりました。工事は二期に分かれて行われており、一期工事では書院、二期工事では本堂、の下にそれぞれ免震装置が取り付けられる、ということでした。見学に行った時は、一期工事は完成し、ちょうど二期工事の本堂の下を80センチほど掘削し、本堂を70センチほどジャッキアップした段階で、本堂全体が地面から浮きあがった状態でした。その下には、免震装置を取り付けるためのRC のスラブと柱脚部が立ち上がり、その上に本堂をジャッキアップするための鉄骨の梁が横断し、もはや伝統的な建造物の下にいるとは思えないものものしい雰囲気になっていました。一期工事の方では、免震工事に加え、地中熱を利用したサーマル空調システムも取り入れられ、そのための配管や設備が免震装置と並んでおり、100年以上前に建てられた木造建築の基礎とは思えないハイテク技術の集積でした。
このようなハイテク工事が行われる一方で、日本の伝統的な施工技術では、柱の下に束石を置き、石に少しくぼみをつけて柱を受け、地震などの揺れを吸収する、という技術があります。これは立派な免震装置といえるそうで、桂離宮阪神大震災の際、この束石のおかげもありほとんど被害がなかった、ということを修理関係者からうかがったこともあります。そこには、建物の重力が軸組みを通して大地に伝わる、というある種自然と一体化するような日本建築の建ち方を重視する考え方もあるようです。というのも、免震装置を取り付ける際には、大地と建築物の間に厚いコンクリートのスラブを挟み、建物周囲には揺れを吸収するための隙間が必要で、つまり大地からは切り離されてしまう、ということになってしまい、古来の建ち方とは全く異なる状態になってしまう、という思想に基づくそうです。確かに、伊勢神宮法隆寺などの下に免震装置が取り付けられる、ということになるとしたら、それはやはり建ち方として受け入れられない、という気がします。
しかし我が国の地震による被害や、昨今の耐震補強ブームを考えると、建物自身を守るということと、伝統的な建ち方に日本建築のあり方を守ろうとすることは、ある種矛盾することでもあり、どちらがいい、という単純な問題ではなく、様々な状況を鑑みて難しい選択を迫られる今後も避けられない問題であると思います。私自身は免振装置だけでなく、エコ技術などのハイテク技術に可能性も感じており、それぞれの事情に応じた最善の手法を選択し、最先端の技術を生かしてうまくデザインでまとめあげるか、ということが今後ますます重要になるということを実感させられる見学会でした。(MK)