クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)

KMKa2009-03-06

台湾のコンテンポラリー・ダンス・カンパニー、クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)の公演をみてきました。「WHITE ホワイト」という白をテーマにした三部作です。このカンパニーは、中国語圏内で初めてのコンテンポラリーダンスのカンパニーで、リン・フアイミン(林 懐民)という創設者かつ芸術監督のもとに活動しています。HPによれば、バレエ、モダンダンスはもちろんのこと、太極導引、瞑想、武術、書道なども習得しているとのこと。全員が少しずつ異なる白い衣装をまとい、動きの中に確かに太極拳的な動きが感じられましたが、決してそれが主張しているわけではなく、動と静の切り替わりによる振り付けの構成には、。三つの作品共、非常にゆっくり体を動かすスローモーションのような動きをする場面が多く、ゆっくりした動きは一見大変そうにはみえませんが、実は非常に難しいバランスでポジションをキープしていて、ダンサーが醸し出す場には確かに独特の「緊張感」が漲っていました。動きもさることながら、ダンサーの動きの見せ方にもいろいろな演出がされていて、吊り下げられた白い帯状の布の間をダンサーたちが行き交うものや、布にダンサーのシルエットだけを移したもの、などがありました。中でも二作目では、舞台の背面のみ白く光らせ、その前で踊るダンサーたちは逆行になって黒い影だけになり、その上ほとんど着地音が感じられず、厚みのある立体的な影による様々な動態表現には人間が拘束されている重力から解放されているような不思議な感覚を覚えました。白と黒のみの無彩色の舞台でしたが、舞台全体に広がる緊張感と凛とした美しさにあふれた舞台でした。
毎年行われているスイスのローザンヌ国際バレエコンクールでも近年はアジア勢の活躍が著しいですが、そこではひたすら西欧文化としてのバレエに対するあこがれが前面に感じられるのですが、今回のこの演出のように、アジア的な文化を巧みに融合させ新たな領域にまで昇華させている作品を鑑賞して、自分たちの文化や伝統に対する畏敬とそれを再構築することで独自の表現を追求する姿勢には共感を覚えました。(MK)