O家改修工事見学

KMKa2009-02-26

たまたま機会があって、大学のそばの古民家O家改修工事を見学させていただきました。O家は築400年程の木造の古民家で、目黒区にありながら奇跡的に残る約2000坪ほどの周りを保存林に囲まれた敷地のほぼ真ん中にあり、現在、耐震補強を兼ねた改修工事と屋根の葺き替え、加えて古民家に接続するRC造の新築の住居を建築中とのことでした。古民家は、壁の小舞を壊し、新たに木下地を作って構造用合板を張るという手法で、改修前と同じ平面を維持し、新築住居とともにこれからもご家族で使い続ける、とのことでした。
屋根の架構を調べるとその材質から「350〜400年前」のものだ、ということが判明したそうで、「築350〜400年」というと江戸時代初期ということになります。屋根裏に上棟式のときに飾られた破魔矢が見つかったらしいのですが、黒ずんでしまっていて、文字が読める状態ではなく、なかなか決定的に断定できない段階だということでした。「築400年」が検証され「重要文化財」と指定されるかどうかは専門家にお任せするとして、素晴らしいと思ったのは、O家のご主人の家や土地に対するその熱い思いです。現代のような社会制度や環境では、このように土地を残したり、古民家に住み続ける、ということはとても困難なことです。ご主人はこの敷地の中で、先祖代代受け継いだ土地、緑、住宅を大切に維持し、またそれを現在も使い続け、さらに未来へつなげていこうと、つまり「保存林=古代、古民家=近世(?)、新たに新築する住宅=21世紀」といった大きな時間の流れを描きたい、という夢を語ってくださいました。実際敷地に建つと、20mほどありそうな木々に囲まれ、長屋門、古民家、お堂といった建築物が広い敷地の中に点在し、一瞬どこか地方に来たような錯覚におちいります。しかし、その中にRCの現代的な住宅が完成すると、ご主人の描く「時間の流れ」が目の前に現れ、それはそれで興味深い光景になると想像されます。どんどん土地が細分化される現代において、個人でこのような管理をされることには、大変な困難も伴うと思います。誰もが抱ける夢ではないですが、是非その夢を維持し続け、貴重な建築と緑を残し続けていただきたいと思いました。(MK)