Bilbao Guggenheim美術館を見てきました。

KMKa2008-12-13

一度実物を見てみたかったFrank.O. Gehry設計Guggenheim 美術館をスペイン北部の町Bilbaoまで見に行ってきました。カラトラバの設計した飛行場からバスに乗って市内まで20分ほど走り、市内に入る手前でトンネルをぬけると、その目の前にBilbao Guggenheim美術館が目に飛び込んできました。何度も雑誌等で目にしてはいたはずですが、その存在を目の前にするとやはり一瞬の驚きがありました(朝早くの飛行機だったので、寝ていたせいもありますが。。)。美術館が建っているエリアは、Bilbaoの市内でも旧市街から15分ほど離れた川沿いの再開発地域で、現在も美術館の周辺は工事がおこなわれている場所が多く(他にもカラトラバの橋やS&Aa設計の複合文化施設やIMB ARQUITECTOSによる図書館改修、フォスターの地下鉄の駅など。。)、Guggenheim美術館は一帯の再開発をあらゆる意味で牽引している存在だといえます。
あいにくあまり天気が良くなかったからかもしれませんが、予想に反してその外観はいい意味で「まとまっている」と思いました。様々な方向に広がり一見ばらばらなように見える外観をしていますが、よく見ると一つ一つが真ん中の一番高いヴォリュームに求心し、微妙なバランスで寄せ集まったような一種の群景を形成し、絶妙な形態となっていると思いました。全体的な造形力は凄まじいもので、現代のコンピューターによる計算能力と建設技術がなければ成立しえなかった難解な形態にはその建設過程を含めある種の感動すら抱きます。
街中から川沿いの斜面を下って美術館のエントランスに入ると、はじめに大きな吹き抜けの一番下のロビーでその全貌を見上げその派手な空間に圧倒されます。美術館の中を歩いていても、様々な形状の量塊が折り重なり、場面が目まぐるしく展開するのはまるでハリウッドのアクション映画のようで(Gehryの本拠地がロサンジェルスですからね)、そういう意味では単純に老若男女問わず楽しめる空間となっていると思います。
また外観が与える複雑そうな印象に反して美術館内部の動線は比較的シンプルで、吹き抜けのロビーに各展示室に至る動線が面しているので、自分がどこにいるのかもわかりやすいものとなっています。しかし残念なのは、その吹き抜けは、はっきり言ってかなり整合性がないというか錯乱しているというか、いろいろな部分の帳尻合わせがその吹き抜けに集約されてしまったのか、吹き抜けの周囲にめぐらされた廊下やガラス面、エレベーター、キャットウォークなどの支持部材が特異な形態のユニークな組み合わせからなる吹き抜けのなかに散在し、かなり気になる存在になってしまっていることでした。調整が難しかったのか意図的なのかはわかりませんが、パーマネントコレクションのひとつであるRichard Serraの展示室でもそれは同様で、美術館の中で最大の展示室の天井を支持する梁の存在感が大きく、肝心の美術作品とはうまく干渉していないと思いました。美術作品と建築との関係はいろいろなところで話題になっていますが、この美術館に関しては建築自体が強すぎて、美術鑑賞に集中できず(私が建築家なので一層そう感じるのかもしれませんが)、その相互関係の難しさを改めて実感しました。この美術館の場合、それ自体が作品として都市に置かれている、という方がしっくりいき、単純に美術館自体を鑑賞しに行くという姿勢で十分な気がしました。
 

もうひとつ残念なのは、外観の豊かな凹凸の割には、実際に人が近づける場所が少なく、あくまでも鑑賞材料としてのその形態操作に終止してしまっていることです。この建物は川沿いの水辺空間に立地し、その凹凸のあり方をもう少しブレイクダウンすればヒューマンなスケールにまでその恩恵が届き、庇になって影を提供したり、小さな囲い込みの広場的な場となったりして、もう少し水際に建つ建物として、市民に対しても公共的な場を提供することができたのではないかと思いました。
美術館の在り方としてふさわしいのかどうかは議論の余地があるにしても、この美術館がなければ恐らくビルバオを訪れなかったであろう私のような観光客が増えたことも確かな一方で多くのリピーターを確保し持続性のある存在になりうるかどうかは、少々疑問が残りました。(MK)