雲中都市Marvão

KMKa2008-12-06

ポルトガル中部のアレンテージョ地方でスペイン国境に極近いMarvãoという小さな都市があります。12世紀Afonso2世国王の時代から17世紀までにスペインとの独立戦争までの間、難攻不落の要塞都市として重要な都市のひとつでした。1000m近い岩山の頂に城壁に囲まれた都市は、晴れている日には遠方からでもその姿が眺められ、城の上からは眼下にひろがる起伏豊かなアレンテージョの大地とスペインが見え、夕暮れ時にはオレンジ色に染まった空が目の前に広がります。今ではその城壁内にはわずか185人の住民(観光案内書によります)がひっそりと生活する、まさに地上から切り離された都市といえるでしょう。
先日ここを訪れましたが、ポルトガルも今の時期は雨が多く、その時はあいにく雲の中。山の上のせいか、風がものすごく吹きすさぶのに、雲は一向にとぎれず、雲が目の前を流れ、視界はわずか20m程度といった別世界。そういう状況だったため残念ながら、ふもとからその頂を望むこともできず(その姿を見に行くのが目的だったのですが。。)、眼下に広がる雄大な大地も眺めることはできませんでした。そんな雲の中では、地図もやくにたたず、ただ地形だけを頼りに歩いて行くと、霧の向こうに城が現れ、教会が現れる、というように身体の五感を全開にして徘徊?せざるを得ない私でしたが、住民はさすが、そんな中でも普通に車を走らせ、子供は広場を走り、いつもと変わらない様子で(当たり前ですが。。)、そんな様子に出会い素直に驚いてしまいました。また城壁内の住宅の壁は真白で窓の四方枠だけが石だったり、塗装がされていたりするのですが、白い壁のエッジが霧で見えず、まるで雲と壁が溶け合っているような見たことのない光景に出合うことができました。
12世紀には激しい戦いを繰り広げた要塞都市としてポルトガルの中でも最も高い都市の一つとして築かれたMarvãoですが、現在の静けさを象徴するような雲中での都市体験は、丘陵都市の究極のあり方を実感する貴重な体験でした。(MK)