Sines Curural Centerを見てきました。


リスボンからバスで2時間程の所にある鄙びた港町SinesというところにあるSines Curtural Centerを見てきました。(SinesはVasco da Gamaが生まれた街で、ここからインド航路発見の旅に出たというので有名な街です。)この建物はAreisMateusというポルトガル人兄弟の建築家によって設計され、2005年にMies Van Der Rore賞を受賞しています。Sines という16世紀からの港町の歴史的中心地区の外縁、新市街地区との境界に位置し、図書館、美術館、ホール、アーカイブなどが入った複合文化施設です。この建物を決定づけているのはその配置で、旧市街内のCasteloから旧市街を縦断するRua Cihadido dos Reisを挟んで地上階が対面して建ち、街路を歩いているのに建物の中を通り抜けるような仕掛けになっています。この配置が最初から設計条件だったのかは知りませんが、旧市街の中で他の建物に比べてひときわ大きくならざるを得ない機能的な要求を、街路を挟んだ二つのヴォリュームに分け、機能を半分地下に収容することで、旧市街の中での他の建物との連続的な建ち方をしています。旧市街の中からみて左側の建物に図書館が入り、右側にホールが入り、それらを繋ぐ地階部分が美術館になっています。抑制された天井高の入口ホールをはいったすぐ横が新聞や雑誌の閲覧コーナーになっており、そこにいると街路を歩く人が見え、建物と街路が連続しているように感じます。地階の美術館からも吹き抜けを介して街路が見え、外の光が下り、あまり地階にいるということを感じさせないものになっています(まして街路の下だということは、ほとんど感じません)。それに比べて上階に行くと、地上階のヴォリュームを分棟にしたためか、多少閉鎖的な感じはいなめず、外部との繋がりもほとんど感じません。禁欲的で象徴的な外観は非常に印象的で強い存在感を放っていますが、もう少し上階で外部との繋がりがあってもよかったかなあ、と思いました。また、旧市街側から見て右側の建物には、街路レベルで劇場が入っているのですが、普段はひとけがなく、反射ガラスで閉じられているため、寄り付きにくいものとなっています。催しがあるときは、この街路自体がホワイエの役割を担い、外部まで巻き込んだ賑わいを見せるのだと思いますが、催しは日常的なものではなく、あくまでも市民のための施設だとすれば、もう少し街路に対して開放的な作り方もあったのではないか、とも思いました。新市街との境界部分ももう少しセットバックさせ(街路レベルだけでも)、街路からの延長としての広場を設ければ、旧市街の玄関として人々を迎えるしつらえになるのではないかなあ、と思いました。
いろいろ言いましたが、総じて街路との関係や建物のヴォリュームなど、旧市街内の複雑なコンテクストに対して十分に応え得る建物になっていると思いました。(MK)