東方美人茶

KMKa2008-06-22


私はいろいろなお茶を飲みます。調査でマカオによく行っていた頃には、地元のスーパーでいろいろなお茶をお土産に買ったりしていました。マカオのスーパーでは日常品なので特にきれいに包装されているわけではありませんが、「白銀茶」「普 茶」「茉莉花茶」「鉄観音茶」「烏龍茶」「龍井茶」など色々買ってきて楽しんでいました。初めは香りや味が独特で、あまり好きになれなかったものもありますが、何回も飲んでいるうちに料理との相性が馴染んできて、中華料理を食べた後は必ず中国茶を飲むようになりました。中国茶は味の他に香りを楽しむものでもあり、疲れた時はアロマ替わりに香りを求めて淹れることもあります。最近のお気に入りは台湾原産の烏龍茶の一種で「東方美人茶」というもので、少し甘味のある不思議な味わいです。色は茶色で、紅茶のような風味もありますが、飲んだ後には紅茶にはない清涼感があり、その微妙な味と香りには気品すら感じられ、嗜好品として味わうのに十分に深くて強いお茶です。「東方美人」という名前は、19世紀末に英国にこの茶葉が渡っときに紅茶にはない味わいが評判となって「オリエンタル・ビューティ(Oriental Beauty)」と呼ばれるようになり、その名前が逆輸入されたといわれています。ちょうどその時代、極東アジア文化がヨーロッパを風靡し、その憧れが表れているこの名前には、地球の反対側の人々の茶葉を介した交流がうかがえ、そんな部分にも話題性をしのばせた楽しいお茶です。
ちょっと話は飛びますが、お茶をめぐる話で最近面白かったのは、ポルトガル語の授業でコーヒーの話になったときに、ポルトガル人の先生が「アイスコーヒーはコーヒーに対する侮辱だ!」と言っていことです。「アイスコーヒー」は本国ポルトガルではありえないことらしく、コーヒーを氷で薄めるなんて青天の霹靂と言わんばかりの勢いで、いろいろなお茶を飲むうえに、暑い時にはどんなお茶でも氷を入れて飲んでしまう私は、先生のコーヒーに対する誇りに少し感激し、今年は暑くてもアイスコーヒーは飲まないでみようかと、ちらっと思ったりしました。ちなみに香港やマカオではアイスコーヒーも「凍珈琲」といってメニューにあり、巷の食堂などではコップの半分ぐらいが氷です。これはもう侮辱を通り越してますね!
もう一つ、コーヒーで面白かったのは、数年前にマレーシアのペナンに行ったとき、食堂のメニューに「カプチーノ」らしきものがあったので、恐る恐る頼んでみたら、味はとても「カプチーノ」ではなかったのですが、その淹れ方がかなりの職人技で、それは今でも印象に残っています。二つのコップ(かなり背の高いもの)を用意し、まずそのひとつにコーヒーとコンデンスミルクをいれ、それをスプーンで勢いよく混ぜた後、両手にコップをひとつづつ持ち、その両手を大きく広げ、片方のコップからもう片方へめがけて勢いよく弧を描いて流すのです。それを右から左、左から右と何回か繰り返すと、自然と泡立ち、それを客に出すカップに移して完成です。どうしてこのような淹れ方になったのかとても不思議なのですが、味はともかく、パフォーマンスとしては一見の価値があります。
お茶にはその場所の伝統的な生活慣習や他の文化へのあこがれや影響が詰まっていて、いろいろなところに行ったときに必ず観察することの一つになっています。建築には直接関係ないかもしれませんが、どんな種類のものを飲むのか、一日どんなタイミングでお茶を飲むのか、どんなところで飲むのかなど、これからもどこへ行っても観ていこうと思っていることの一つです。(MK)