シャネルとザハ

KMKa2008-06-16




代々木の東京体育館前の広場で開催中の、シャネル モバイル・アートに行ってきました。

アートの「コンテナ」を設計したのはイラク人の女性建築家、ザハ・ハディッド。建築界のノーベル賞と呼ばれる、プリッツカー賞の受賞者である、スター建築家ですが、考えてみたら、彼女の作品を実際に見るのは初めてでした。到着すると、丹下先生の代表作である代々木の体育館の横に、最近のザハのスタイルである白いぬめっとした物体がまるで宇宙から着陸したように、置かれていました。

順番を呼ばれて物体に近づくと、ついその白い表面を触ったり叩いたりしてしまうのが、建築家の癖で、1枚1枚違う形のパネルを組み合わせて作ってあるのを見て、思わず施工の面倒を考えてしまうのでした。ひきこまれるような、入り口から入り、案内を受けてヘッドホンを装着し、MP3から流れる妖しい声に従って「コンテナ」内を歩きます。中で体験できるのは全て現代アートで、多くがシャネルのモチーフを使っています。私は現代アートはあまり詳しくありませんが、私の大学時代に美術史の授業で「現代美術」として登場したアーティストが今回も多く含まれていたので、アート界もあまり新たなスターがいないのかな、とちょっと心配になりました。それより、「皮のキルト」や「皮の絡まった金のチェーン」というモチーフが繰り返し使われているのを見て、シャネルのこの「デザイン」が時を越えて、イコンになっている強さを感じました。

ザハの「コンテナ」はそれぞれの場所に置かれたアートに旨く調和していて、とても面白かったです。彼女は同じような形態で駅とか、バス停も作っているようですが、日々見るものとしてはどうかと思いますが、移動式のアートのコンテナという非日常を演出する空間を提供する建築家としては適任だったとつくづく思います。

それにしても、これだけの企画に帰りにはお土産の立派なカタログまでついて無料という太っ腹!なシャネルには改めてびっくりです。これを見に来る人のほとんどは(私を含め)シャネルのお客ではなさそうですし・・・。最近のアートのパトロンはハイ・ファッション・ブランドという、これまたねじれた構図に「ショッピング研究」をやっていた身としては、非常に興味をそそられるのでした。(KM)