KMKa2008-06-08


ゴールデンウィーク明けに始まった川崎市のマンションの改修工事が終了しました。お施主様がこれまでに収集してこられた見事なアンティークの家具にふさわしい空間とすること、清潔で機能的なキッチンとすること、が主なご希望でした。多くのマンションがそうであるように、改修前は、玄関から廊下、リビングという一方通行の光の入らない動線空間や、リビング脇には和室がある、といった点で典型的な平面でした。これまでに見たことがないようなアンティーク家具のコレクションを前にし、どうしたものかとしばし戸惑いましたが、アンティーク家具を主役として建築はそれが描かれるキャンバスとなるよう、アンティーク家具に同調させるような装飾等は一切やめ、空間の形だけをシンプルに整えることに徹しました。畳をはずして床のレベルを同じにして一室空間とし、梁廻りや枠廻りを整え、視界に入る線の数が減らすことで見た目をすっきりさせ、アンティーク家具の特徴的なラインが映えるように建築自体は非常に抑えた仕上げとしました。
また改修前の平面で不思議な寸法になっていた廊下やキッチン内の空間のたるみを集約し、キッチンを60センチ程度平面的にずらしながら、サービス土間としてのスペースを確保し玄関脇から動線を枝分かれさせることでキッチン周りに回遊動線をつくりました。一方通行であった廊下の閉塞感を解消しながら、キッチンの両側が視線・動線的に抜け、空間的な広がりも獲得できました。お施主様にはこの回遊性のある動線処理を非常に気にいっていただき、また工事中も大工さんや職人さんたちには「作業がしやすい」と非常に好評でした。改修により一室になった空間は、アンティーク家具の配置により、観葉植物の緑がまぶしいベランダに面した明るいリビングとサービス土間から直接入ることのできるほの暗い落ち着いたリビングという二つの性格の異なるリビングに分けられました。また光の入らかった暗い廊下の突き当たりには、玄関から入ってくる人を迎えるこの家の顔としてガラスがはめ込まれたアンティーク建具をフィックスし、暗かった廊下にベランダからの光を導きました。
今回の改修では、個性の強いアンティーク家具に対するお施主様からの使い方の提案を受けながら設計を解いていきました。なかなか普段相手にすることのないアンティーク家具でありましたが、これらを設計のきっかけとしながら、少しだけ新しい生活も提案できたのではないかと思っています。
尚、改修工事の基本概要は、写真も含めて「Project」のコーナーに近日中に掲載する予定ですので、そちらをご覧ください。(MK)