香港・深センビエンナーレーその2

先日この場で書いた「香港・深センビエンナーレ」での展示について、もう少し詳細です。我々に与えられたスペースは、幅約2.4m、奥行き約6m、天井高約4mという、細長い廊下のような部屋でした。我々の展示は、マカオの都市形成、路地空間の紹介、路地空間の再生計画案をパネルにまとめたものです。初めこのスペースが与えられたとき、ずいぶん細長くてどのような展示計画ができるのか戸惑いましたが、展示内容がマカオの路地空間のことなので、この細長い空間をマカオの路地空間に見立て、そのスケール感を体験してもらえればよいのではないか、ということになりました。会場の建物自体が歴史的建造物であるため、壁面にはテープ、ピン、釘等一切施してはならない、という厳しい条件のもと、まず天井近くに走る電気の配管に30mmφのアルミパイプを結びつけ、そこからビニル系の細い糸で編まれた工業用の幅1mの布を床まで垂らして壁面を覆い、入口側には袋小路の接道側にある門型を模しました。また伝統的長屋の屋根の垂木をイメージして、20mmφ程度の竹を15cm間隔で上部のパイプからテグスで吊るして天井面を覆いました。出来上がった展示空間は、柔らかな布の作り出す繊細な表情と宙に浮いた竹の垂木の不思議な浮遊感に包まれたものとなりました。すべて現地調達の材料で施行することになっていましたが、準備期間も非常に短かったため、事前に材料等の確認がうまくできず、新年早々不安の塊で日本を発ちましたが、「案ずるより産むが易し」とはよく言ったもので、一緒に施行に行った大学院のK君、Hさん、Y君に大いに助けられ(ほぼ24時間脚立に上りっぱなし、立ちっぱなしでテグスをむすび続け!)、何とか形にすることができました。100%満足という訳にはいきませんでしたが、現地であるものを工夫して臨機応変に対応できる柔軟性と、その場での判断力や決断力の重要性を実感した3日間でした。途中、用意されていた竹が足りなくなり、香港大学の松田先生の車に竹を積んで急斜面の香港の市内を走ったり、慣れない施行作業に手間取り準備の3日間中ほとんど徹夜で過ごしたり(香港の元監獄で一夜を明かすとは!)、なかなか希有な体験でした。(MK)