ポルトガルの建築とタイル(1)

KMKa2008-08-21


ポルトガルの建築の特徴の一つにアズレージョAzulejoと呼ばれる装飾タイルがあります。街中を歩いているとそこら中の建物の外壁が色彩豊かなアズレージョで覆われているのに気付きます。形、大きさ、使用されている建築の部位、描かれているテーマ、色彩など、バリエーションは豊富で、また使用されている建築も教会や宮殿などの歴史的な建造物から住宅や商店の看板、鉄道などの駅舎などと多種多様です。中世から現代にいたるポルトガル建築にはなくてはならない装飾的要素であります。
Azulejoは16世紀にイスラムのタイルAl zulayjが輸入されたことに端を発し、その後、オランダのデルフトタイルや、バロックロココ、新古典といった西欧の様々な様式にインド、中国や日本の青磁の影響も混じっていたりと、アジア諸国に植民地をいくつも抱えていたというポルトガルならではの文化が表れています。
台所や水廻りにタイルを貼るのは我々にとってもそれほど珍しいことではないですが、街路に連続して建ち並ぶ建物の壁面や、教会の正面壁全体がAzulejyoで覆われているのは、見慣れないせいか非常に気になる存在です。一般的な建物では色彩も豊かなタイルが使用されていることが多いのですが、教会では内外共に、青と白で描かれたタイルが使われていることがほとんどです(それがなぜなのかよくわかりませんが)。またその使われ方をみても、壁面全体、回廊の全周の腰壁、天井全体というように、その部屋の方向性を強調したり、囲繞性を高めたり、というようにある種の空間の質を規定する非常に支配的なものが多く、単なる装飾以上のパワーが感じられるのです。こういった壁面をAzulejoで覆うのは、tapete(carpet) styleと呼ばれており、その名の通り、壁面に絨毯が貼られているような印象を受けます。
シザの設計したMarco de Cavenasの教会の二つのタワーの一つの室内全体が乳白色のAzulejoで覆われていたり、OMAの設計したo Portoに建つCasa da MusicaのなかにもAzulejoで全体が覆われたVIP Terraceと呼ばれる部屋があったりと、大御所の建築家でも意識せざるをえない伝統的で地域的な素材なのです。Casa da Musica自体はその建築構成的にもどの街にも存在し得る建物だと思いますが、このVIP Terraceだけはポルトガルらしさを感じさせるものになっていると思います。
これからも何回かこのAzulejoについて、いろいろお伝えしようと思います。(MK)