Housing and Trade complex ‘TERRAÇOS DE BRAGANÇA'/設計:Álvaro Siza Vieiraを見てきました。

Álvaro Siza Vieiraの設計したHousing and Trade complex ‘TERRAÇOS DE BRAGANÇA’は、リスボンのBiro Altoと呼ばれる地区の中でも特におしゃれなブティックや老舗の集まるChiadoという地区の一角、テージョ河側から上がる急勾配の斜路の途中、約15mの高低差のある敷地の上に位置しています。中庭を挟んで別々の二つの街路に面した細長い二つの建物からなり、それぞれアイボリーと薄い青色のタイル貼りで、窓廻り等のディテールもSizaらしい非常にシンプルな抑制した表現ですが、連続する窓やベランダといった慣習的な要素の配置により、周囲の街並みに調和した外観となっています。
この建物は1階にはオフィスなどが入り、2階から上は集合住宅なので、普段はドアが閉まっていて入れないのですが、たまたま通った時に開いていたので、ちょっと失敬して中に入らせていただきました。二つの街路に面した建物に囲まれた中庭は、14世紀の城壁の遺構を取り込みながら再構成したもので、柱で建物全体を持ち上げ、この中庭を介して二つの棟を連続的に扱っています。この中庭全体には芝生が植えられ、棟と棟に挟まれた視線の先は、幅が広くてほとんど海のようなテージョ河があり、交通の激しい二つの街路に面しながらも、その喧騒から逃れ、静かで開放的な非常に気持のよい場となっています。リスボンでは、ほとんどの場所が舗装されているため、公園以外にこのような緑に触れられる場があることは珍しく、そういった意味でもユニークな中庭となっているといえます。また、あえて上部の建物を切り離して建てることで、居住部の繰り返された均質で抑制されたフレームと、起伏の激しい地形に古い遺構の野性的な部分を巧みに組み込んだ力強い地盤面の双方が平和的に対峙し、適度な緊張感と年月という絶対的な存在により得られる安心感がこの中庭の居心地のよさになっているのだと思います。ポルトガルでは中世につくられた多くの都市が起伏のある土地を選んで計画されているため、個々の建築においても断面的な処理がその運命を決める大きな要素なのですが、この計画では起伏を無視するのでもなく依存するのでもなく、起伏を読み込むもう一つのやり方として成功していると思いました。(MK)